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Oracle Blockchain Table:データベースにおける改ざん防止へのアプローチ

Oracle Database 21cで導入されたBlockchain Tableは、ブロックチェーンの概念をデータベースに取り込み、データの耐改ざん性と証跡性を強化する機能です。この記事では、Oracle Blockchain Tableの仕組み、特徴、制約、そして活用事例について解説します。

Oracle Databaseのセキュリティ対策とBlockchain Tableの位置付け

Oracle Databaseは、Oracle Advanced Security(データ暗号化)、Oracle Database Vault(アクセス制御)、Oracle Audit Vault and Database Firewall(監査情報統合)、Oracle Data Masking and Subsetting(データマスキング)など、多様なセキュリティ機能を提供しています。Blockchain Tableは、これらのセキュリティ機能を補完し、特にデータの改ざんを防止するためのソリューションとして位置付けられます。

Blockchain Tableとは?

Blockchain Tableは、ブロックチェーン技術の思想を取り入れた特殊なテーブルオブジェクトです。通常のテーブルと同様にデータの格納・検索が可能ですが、以下の点で大きく異なります。

  • イミュータブル性(不変性): INSERT操作のみ許可され、データの更新・削除は一切できません。これにより、データの改ざんを事実上不可能にします。

  • ハッシュ値による連鎖: 各行は一つ前の行のハッシュ値と暗号学的に連鎖されています。このハッシュチェーンにより、データの整合性を検証し、改ざんを確実に検知できます。

Blockchain Tableの利用方法

1. 事前準備 (Oracle Database 19cの場合)

Blockchain TableはOracle Database 21cの新機能ですが、19cでも利用可能です。ただし、以下の事前準備が必要です。

  • RU 19.10とパッチ32431413の適用: 必要なファイルを提供します。

  • COMPATIBLEパラメータの変更 (19.10.0.0.0): Blockchain Table機能を有効化します。

  • パッチ30828205の適用 (Data Pumpユーティリティを使用する場合): COMPATIBLEパラメータ変更によるData Pumpユーティリティの不具合を回避します。

2. Blockchain Tableの作成

専用のCREATE BLOCKCHAIN TABLEコマンドを使用します。

CREATE BLOCKCHAIN TABLE table_name (column_definitions)
NO DROP [UNTIL n DAYS IDLE]
NO DELETE [UNTIL n DAYS AFTER INSERT] [LOCKED]
HASHING USING "SHA2_512" VERSION "v1";
  • NO DROP [UNTIL n DAYS IDLE]: テーブルの削除制限を指定します。n日を経過したデータがテーブルに存在しない場合に限り、テーブルを削除できます。

  • NO DELETE [UNTIL n DAYS AFTER INSERT] [LOCKED]: 行の削除制限を指定します。挿入からn日を経過した行は削除できます。LOCKEDキーワードを指定すると、この保存設定自体を変更できなくなります。

  • HASHING USING "SHA2_512" VERSION "v1": ハッシュアルゴリズムとバージョンを指定します。

3. データ登録

通常のテーブルと同様にINSERT文でデータ登録が可能です。

4. データ移行

既存テーブルからBlockchain Tableへのデータ移行は、INSERT ... SELECT文で行います。Data Pumpユーティリティは使用制限があり、APPENDTRUNCATEREPLACEオプションは使用できません。

5. データ整合性検証

DBMS_BLOCKCHAIN_TABLE.VERIFY_ROWSプロシージャを使用して、データの整合性を検証できます。ハッシュ値の再計算を行い、データの改ざんを検知します。

6. データ削除

保存期間を超過したデータは、DBMS_BLOCKCHAIN_TABLE.DELETE_EXPIRED_ROWSプロシージャを使用して削除します。通常のDELETE文は使用できません。

Blockchain Tableの制約

Blockchain Tableは、高い耐改ざん性を実現する一方で、いくつかの制約事項があります。

  • INSERT以外のDML操作(UPDATEDELETE)は実行できません。

  • テーブル定義の変更(列の追加、変更など)はできません。

  • Data Pumpユーティリティの使用に制限があります。

  • NO DROPを指定すると、後から解除できない不具合が存在します(パッチで対応予定)。

Blockchain Tableの活用事例と課題

Blockchain Tableは、以下のようなユースケースに適しています。

  • アプリケーションのアクセスログや監査ログ

  • セキュリティ上重要な記録(例:高セキュリティエリアへの入退室記録)

  • 法律上確実な保存が要求される情報(例:企業の会計、財務データ)

  • 外部からの攻撃に対して保護すべきデータ(例:勘定系システム、決済系システムのデータ)

ただし、誤ったデータの混入への対応が難しいという課題もあります。FLASHBACK TABLEコマンドは使用できず、データ修正が必要な場合はメディアリカバリを行う必要があります。そのため、データ登録時の検証プロセスを厳密に設計し、データの信頼性を確保することが重要です。

まとめ

Oracle Blockchain Tableは、データベースレベルでデータの耐改ざん性と証跡性を高める強力な機能です。しかし、その制約事項も理解した上で、適切なユースケースに適用することが重要です。

Q&A

Q1: Oracle Blockchainはどのような業界で利用されていますか?
A1: Oracle Blockchainは、物流、金融サービス、製造業、食品業界など、さまざまな業界で利用されています。

Q2: スマートコントラクトとは何ですか?
A2: スマートコントラクトは、特定の条件が満たされたときに自動的に実行される契約です。

Q3: Oracle Blockchainの導入は難しいですか?
A3: いいえ、Oracle Blockchainはテクニカルスキルが限られている企業でも簡単に導入できるように設計されています。