jQuery deferred.then() メソッド

jQuery Deferred を深く理解する: then() メソッド詳解と応用

非同期処理は JavaScript 開発において欠かせない要素ですが、その扱いには注意が必要です。jQuery Deferred は、非同期処理をよりシンプルに、そして可読性の高いコードで実現するための強力なツールです。本稿では、jQuery Deferred の中核を担う then() メソッドに焦点を当て、その詳細な解説と具体的な応用例を通して、非同期処理を使いこなすための道筋を示します。

1. jQuery Deferred とは何か?

jQuery Deferred オブジェクトは、JavaScript の Promise オブジェクトと同様に、**非同期処理の状態と結果を管理するための仕組み**です。AJAX リクエスト、アニメーション、setTimeout など、完了までに時間がかかる処理に対して、Deferred オブジェクトを用いることで、処理の成功、失敗、進行状況を明確に把握し、それぞれに対応する処理を実行できます。

Deferred オブジェクトは、以下の3つの状態を持ちます。

  • **pending (実行中):** 非同期処理がまだ完了していない状態
  • **resolved (完了):** 非同期処理が成功裏に完了した状態
  • **rejected (拒否):** 非同期処理が失敗した状態

2. jQuery.Deferred().then() メソッド詳解

then() メソッドは、Deferred オブジェクトの状態変化に応じて、あらかじめ定義しておいた関数を呼び出すために使用します。非同期処理の結果を受け取ったり、エラー処理を実装したりする上で重要な役割を担います。

2.1. then() メソッドの構文と引数

then() メソッドは、以下の構文で定義されます。


deferred.then(doneFilter [, failFilter ] [, progressFilter ])
  • doneFilter: 非同期処理が成功裏に完了した時 (resolved) に呼び出される関数。非同期処理の結果を引数として受け取ります。
  • failFilter: 非同期処理が失敗した時 (rejected) に呼び出される関数。エラー情報やステータスコードを引数として受け取ります。
  • progressFilter: 非同期処理の進行状況が変化した時に呼び出される関数 (オプション)。主に処理の進捗状況を表示する際に使用します。

2.2. then() メソッドの戻り値

then() メソッドは、新しい Deferred オブジェクトを返します。この特徴により、複数の then() メソッドを連結させて、**非同期処理を連続して実行する**ことが可能になります。これを**「メソッドチェーン」**と呼びます。メソッドチェーンは、コードの可読性を向上させ、複雑な非同期処理を整理する上で非常に有効です。

2.3 then() メソッドを使った非同期処理結果の処理

doneFilter コールバック関数を用いることで、非同期処理が成功した場合の処理を実装できます。例えば、AJAX リクエスト成功時にレスポンスデータを使ってページコンテンツを更新する処理は以下のようになります。


$.ajax({
  url: '/api/data',
  type: 'GET'
}).then(function(data) {
  // AJAX リクエスト成功時の処理
  $('#result').html(data); // レスポンスデータでページコンテンツを更新
}, function(error) {
  // AJAX リクエスト失敗時の処理
  console.error(error);
});

3. エラー処理

failFilter コールバック関数を用いることで、非同期処理が失敗した場合のエラー処理を実装できます。エラーメッセージの表示や、エラーログの送信など、適切なエラーハンドリングを行うことで、アプリケーションの安定稼働を実現できます。


$.ajax({
  url: '/api/data',
  type: 'GET'
}).then(function(data) {
  // AJAX リクエスト成功時の処理
}, function(xhr, status, error) {
  // AJAX リクエスト失敗時の処理
  $('#error-message').text('データの取得に失敗しました。'); 
  console.error(error); 
});

4. then() メソッドによる非同期処理の連結

then() メソッドは、メソッドチェーンを構築することで、複数の非同期処理を順番に実行することができます。各 then() メソッドの戻り値 (Deferred オブジェクト) が、次の then() メソッドに渡されることで、処理が連結されていきます。


// 複数の AJAX リクエストを順番に実行する例
$.ajax({ url: '/api/step1', type: 'GET' })
  .then(function(data1) {
    // step1 の処理
    return $.ajax({ url: '/api/step2', type: 'POST', data: data1 });
  })
  .then(function(data2) {
    // step2 の処理
    return $.ajax({ url: '/api/step3', type: 'POST', data: data2 });
  })
  .then(function(data3) {
    // step3 の処理
  })
  .fail(function(error) {
    // エラー処理
  });

5. Deferred と Promise の関係

jQuery Deferred は、JavaScript の Promise/A 規格 を実装しています。そのため、ネイティブの Promise オブジェクトと相互に運用することができます。

Deferred オブジェクトを Promise オブジェクトに変換するには、promise() メソッドを使用します。逆に、Promise オブジェクトを Deferred オブジェクトに変換するには、$.Deferred().resolveWith(promise) を使用します。


// Deferred オブジェクトを Promise オブジェクトに変換
const deferred = $.Deferred();
const promise = deferred.promise();

// Promise オブジェクトを Deferred オブジェクトに変換
const newDeferred = $.Deferred().resolveWith(promise); 

まとめ

jQuery Deferred の then() メソッドは、非同期処理をシンプルかつ可読性の高いコードで実装することを可能にする強力なツールです。成功、失敗、進行状況に応じた処理を明確に分離し、メソッドチェーンによって複雑な処理フローを整理することで、保守性の高いアプリケーション開発を実現できます。

QA

Q1: then() メソッドで複数のコールバック関数を登録できますか?
A1: いいえ、できません。1 つの then() メソッドには、doneFilter, failFilter, progressFilter それぞれ1つずつ、最大3つのコールバック関数を登録できます。
Q2: then() メソッドは、どのような場面で特に役立ちますか?
A2: then() メソッドは、AJAX リクエストのように、処理の完了を待たずに次の処理に進む必要がある場合に特に便利です。また、アニメーションのように、処理の進行状況に応じて処理を分岐させたい場合にも役立ちます。
Q3: jQuery Deferred は、ネイティブの Promise オブジェクトと比べてどのような利点がありますか?
A3: jQuery Deferred は、Promise/A 規格に準拠しているため、ネイティブの Promise オブジェクトと互換性があります。さらに、progressFilter コールバック関数のように、Promise にはない機能も提供しています。ただし、jQuery を使用しない場合は、ネイティブの Promise オブジェクトを使用する方が良いでしょう。