compute express link

Compute Express Link (CXL):次世代データセンター相互接続技術

Compute Express Link(CXL)は、次世代データセンターにおける高速なCPU-デバイスおよびCPU-メモリ間の接続を実現するために設計されたオープンスタンダードなインターフェース技術です。従来のPCI Express (PCIe) の物理層を基盤に、キャッシュコヒーレンシを備えた革新的なプロトコルを提供することで、データセンターの性能と効率を大幅に向上させます。CXLは、高速データ転送とリソースの最適化を実現し、次世代コンピューティングの基盤を支える技術として注目されています。

Compute Express Link:誕生と発展

CXLは、Intel主導で開発され、2019年3月に設立されたCXLコンソーシアムによって推進されています。このコンソーシアムには、AMD、NVIDIA、Samsungなどの業界を代表する企業が参加し、CXLは業界標準としての地位を確立しています。CXLは、従来のPCIeの限界を超える新たな接続技術を提供し、特にデータセンターやクラウドコンピューティング環境におけるパフォーマンス向上を目的としています。

また、CXLはGen-Zコンソーシアムと統合されることで、相互運用性が強化されました。これにより、異なるベンダーのデバイス間でもシームレスにデータを共有・転送できるようになり、データセンターにおけるエコシステム全体の統合が進んでいます。

Compute Express Link:仕様の進化

CXLの仕様は、バージョンごとに進化を遂げています。

  • CXL 1.0(PCIe 5.0ベース)
    CXL 1.0では、ホストCPUがアクセラレータデバイス上の共有メモリにアクセスできるようになりました。これにより、データのキャッシュコヒーレンシが確保され、ホストとデバイス間で効率的にデータを共有できるようになりました。これが、CXLの基礎的な利点であり、パフォーマンス向上のための第一歩となっています。

  • CXL 2.0
    CXL 2.0では、CXLスイッチングのサポートが追加され、さらに高いスケーラビリティと柔軟性が実現されました。このバージョンでは、分散共有メモリやdisaggregated storage(ストレージの分離)構成が可能となり、システム全体のリソースの効率的な使用が可能になります。また、データセンター内で複数のデバイスを高速で接続することができ、より高いパフォーマンスを発揮します。

  • CXL 3.0(PCIe 6.0 PHYベース)
    CXL 3.0では、PCIe 6.0のPHY(物理層)が採用され、さらに性能が向上することが期待されています。これにより、転送速度や帯域幅が大幅に強化され、より大規模で高速なデータ転送が可能になります。また、CXL 3.0はAIや機械学習、大規模なデータ解析などに必要な計算資源を効率的に活用するための重要な技術進化とされています。

Compute Express Link:プロトコルとデバイスタイプ

CXLは、主に3つのプロトコルを定義しています。これにより、異なるデバイスタイプ間で効率的かつ高速なデータ通信を実現しています。

  • CXL.io
    CXL.ioは、PCIe 5.0ベースで構成・管理機能を提供します。これにより、CXLデバイスの設定や管理を効率的に行うことができ、システム全体の柔軟性が向上します。

  • CXL.cache
    CXL.cacheは、周辺機器(デバイス)によるホストCPUメモリへのコヒーレントアクセスを提供します。これにより、デバイスはホストメモリをキャッシュとして利用することができ、効率的なデータ処理が可能になります。

  • CXL.mem
    CXL.memは、ホストCPUがデバイスメモリにコヒーレントアクセスするためのプロトコルです。これにより、CPUとデバイス間でのメモリアクセスが高速かつ一貫性を持って行われ、パフォーマンスが向上します。

また、CXLは、次の3種類のデバイスタイプをサポートしています。

  • Type 1 (アクセラレータ)
    CXL Type 1デバイスは、アクセラレータとしての機能を提供し、高速な計算処理をサポートします。これには、AI処理や機械学習のアクセラレータが含まれます。

  • Type 2 (汎用アクセラレータ)
    Type 2デバイスは、汎用のアクセラレータとして、計算やデータ処理を加速します。Type 2は、デバイスバイアスモードとホストバイアスモードの2つのメモリコヒーレンスモードを備えており、より柔軟なリソースの共有が可能です。

  • Type 3 (メモリ拡張/ストレージ)
    Type 3デバイスは、メモリ拡張やストレージの役割を果たし、システム全体のメモリ容量やストレージ容量を大幅に増強します。これにより、より大規模なデータセットの処理やストレージの要求に対応します。

Compute Express Link:実装と将来展望

CXL対応の製品がすでに市場に登場しており、今後さらに広がりを見せると予測されています。例えば、IntelのAgilex FPGA、Samsungのメモリ拡張モジュール、そしてIntel Sapphire RapidsAMD Zen 4プロセッサなどがCXL対応製品として開発が進められています。これらの製品は、CXLの高速接続技術を活用し、データセンター内での計算能力とストレージ性能を大幅に向上させることができます。

CXLは、今後、高性能コンピューティングAI機械学習などの分野で重要な役割を果たすと考えられています。特に、AIモデルのトレーニングや推論に必要な計算リソースを効率的に処理するための基盤技術として、CXLはますます不可欠な技術となるでしょう。

将来的には、CXLの普及により、データセンターのコンピュータリソースの利用効率が飛躍的に向上し、次世代のクラウドサービスやエンタープライズアプリケーションにおいて、より高速でスケーラブルなインフラストラクチャが提供されることが期待されています。

参考文献

IntelのCompute Express Linkについて

Q&A

Q1: コンピュートエクスプレスリンクはどのように機能しますか?
A1: コンピュートエクスプレスリンクは、データセンター内のデバイス間で低レイテンシーで高スループットのデータ転送を実現するために設計されています。
Q2: この技術の主な利点は何ですか?
A2: 主な利点には、データ転送速度の向上、システムのスケーラビリティの向上、および異なるデバイス間の互換性があります。
Q3: コンピュートエクスプレスリンクはどのような環境で使用されますか?
A3: 主にデータセンターやクラウド環境で、高速データ転送を必要とするアプリケーションに使用されます。